2018年度の企画



『質心、軽暖の方法論祭り2019』

質的研究は、方法論のハウツーを学ぶだけでは不十分だと言われます。しかし、 さまざまな方法論を学ぶことは、質的研究で重要とされる勘所を理解し、目的に かなった方法論をつくる上でも重要だと思われます。そこで、研究交流委員会で は、1つの方法論を1日かけてじっくり学びつつ、複数の方法論についても学ぶこ とのできる企画を3月2日・3日に実施します。今回は「現象学的研究」(3日)と、 現象学に近い観点をもちつつ、フィールドでの独自の展開をした「エピソード記 述法」(2日)、そして「エスノグラフィー」(3日)の3つを取り上げます。
 現象学つながりで、「エピソード記述法」(2日)と「現象学的研究」(3日)を受 講してくださっても、フィールドつながりで「エピソード記述法」と「エスノグ ラフィー」を受講くださっても、またどれか一つだけでも、様々な学びが得られ ると思います。ご関心のある方はこの機会にぜひ御参加ください。

会場:武蔵野美術大学 三鷹ルーム(JR三鷹駅 徒歩4分)

参加費:
 会員(2019年度から入会申し込み中も含む):1企画につき500円 当日払い
 非会員:1企画につき3000円

3月2日「エピソード記述で対話する」 講師:勝浦眞仁(桜花学園大学) 詳細
3月3日 「体験から学ぶエスノグラフィー」 講師:柴山真琴(大妻女子大学) 詳細
3月3日 「はじめての現象学的研究」 講師:坂井志織(首都大学東京)詳細


■3月2日 「エピソード記述で対話する」 講師:勝浦眞仁(桜花学園大学)
【概要】
保育・教育・看護・臨床など、人と人とが出会う場で起こっている事象を研究上 の問いとして立ち上げ、考察していくときのアプローチとして、鯨岡峻先生が提 唱した「エピソード記述」があります。このアプローチに挑戦してみると、自身 の体験を描きたいという気持ちとは裏腹に、どんな言葉が読み手に伝わるのか思 案したり、このエピソードは自身の問いに迫り切れていないのではないかと悩ん だりと、葛藤や躓きを覚えることがあります。しかしこの葛藤や躓きの中にこそ、 新たな概念が導かれる可能性も含まれています。このセミナーでは、予め皆さん に今後の研究で素材としたい場面のエピソードを描いてきていただきます。そし て当日は参加者同士での対話の場を通じて、エピソードを多角的に考察すること で、エピソード記述に対する理解を共に深めていきましょう。

【タイムテーブル】
13:00-13:50 エピソードを描く難しさと面白さ―私の体験からー
14:00-15:30 グループワーク
15:30-16:00 まとめと振り返り
【参考図書】
鯨岡峻(2016)関係の中で人は生きる,ミネルヴァ書房
勝浦眞仁(2016)“共にある”ことを目指す特別支援教育,ナカニシヤ出版
【事前課題】
@エピソード(今後の研究で素材としたい場面のエピソード)を1つ描いてくる こと。完成形である必要はなく、分量も問わないが、個人情報等が含まれる場合 は、倫理的配慮をする。
A4人グループで読み合わせ対話するので、記述のコピーを3部準備すること


■3月3日 「体験から学ぶエスノグラフィー」 講師:柴山真琴(大妻女子大学)
【概要】
エスノグラフィーにおいて、参与観察はデータ収集法の一つです。フィールドで 生きる人々の体験的世界を描き出すためには、参与観察をいかに行うかが重要で す。しかし、データ収集から分析までを段階的または理論的に学ぶ機会は多くあ りません。そこで、今回のセミナーでは、マイクロ・エスノグラフィーの技法を 用いて、<フィールドでの観察−観察データの記録−分析>という参与観察の基 本過程を、ステップを踏みながら体験的に学ぶ機会にしたいと思います。セミナー では、実際にグループでフィールドに出かけて同じ事象を観察後、各自でフィー ルドノーツの作成とデータ分析を行うというワークをしていただきます。マイク ロ・エスノグラフィーの技法を身につけるだけでなく、分析結果の共有を通して、 自分と他者の「現実」の見方を知る機会にもなればと思います。

【タイムテーブル】
10:00-12:00 〈事前講習〉マイクロ・エスノグラフィーにおける参与観察の進め
       方やフィールドノーツの書き方に関する講義
12:00-16:00 〈参与観察〉@グループ単位で同じ現象を観察(吉祥寺駅周辺また
       は井の頭公園)A各自でフィールドノーツの作成とデータ分析
16:00-18:00 〈事後講習〉グループ内での結果の共有,全体での意見交換

【参考図書】
(A)箕浦康子(1999)フィールドワークの技法と実際:マイクロ・エスノグラフィー
  入門、 ミネルヴァ書房
(B)柴山真琴(2006)子どもエスノグラフィー入門:技法の基礎から活用まで 新曜社

【事前課題】
テキスト(A)の第1章から第6章を読んでくると理解が深まります。

【持ち物】
@メモ帳:参与観察をしながらフィールドメモをとる際に使用します(A6版程度
 の小型ノートをお薦めします)。
Aパソコン:フィールドノーツを作成する際に使用します。パソコンを持参でき
 ない場合は、手書きでフィールドノートを作成していただいてもかまいません。
 そのためのノートや用紙等をご持参ください。


■3月3日 「はじめての現象学的研究」 講師:坂井志織(首都大学東京)
【概要】
近年、現象学的研究に関する書籍が複数出版され、考え方の道筋が以前より身近 になってきました。しかし、いざやってみようと思うと、どうしていいかわから ないという声を耳にします。どの研究手法も、一度実体験することが理解への近 道になると思います。そこで、今回のセミナーでは“現象学的な態度”や“デー タにおける視点の取り方”を、複数の演習やワークショップを通して体験し、現 象学的研究に入門する機会にしたいと思います。
【タイムテーブル】
10:30-12:00 講義
12:00-13:00 ランチョン演習1
自己紹介&研究テーマに関連した気になっている事象
13:00-14:30 演習2 データ分析グループワーク
14:30-14:45 休憩
14:45-15:00 発表準備
15:00-16:00 発表とディスカッション
16:00-16:30 まとめ
【テキスト】
松葉祥一・西村ユミ(編著)『現象学的看護研究――理論と分析の実際』医学書院、 2014年
【事前課題】
@ 予習:テキストの第一部、第三部を読んでくる
A 事象の書き出し:自身の研究テーマに関連する気になっている事象を詳細に書き 出す。分量はA41〜2枚程度で、箇条書きではなく文章で書くこと。一般的な事では なく、自身が関連する事象にすることが望ましい。