東日本大震災に対する本学会の取り組み(2013年5月更新)

 未曾有の大災害で被災され、困難な日々の中にある方々に衷心よりお見舞いを申し上げます。前理事長からのメッセージを具体化し、長期的な支援を通して新たな研究活動の可能性をも模索すべく、日本質的心理学会・東日本大震災ワーキンググループ(震災WG)が設置され活動を行っています。フィールドに寄り添い、経験を決して量に還元させないという質的心理学の姿勢のもと、新たな支援と研究の活動を模索し展開しています。以下、活動の方針とこれまでの概要をご報告します。

理事長からのメッセージ「私たちに、何ができるでしょうか?」

1.基本方針

(1)すでに多くの会員の手で個別に行われている支援活動・研究活動を広く共有し、相互交流や情報交換を促して、本学会としての、本学会ならではの震災支援活動という共通財産を生みだすことを、本WGの目的とする。

(2)報告、情報交換、学術的検討の場(メディア)として、雑誌やメールマガジン、大会シンポジウムや研究会などを最大限に活用すべく、質心学会の各ユニットを媒介し調整することを、本WGの第一義的な任務とする。

(3)以上の活動にあたっては、

<1>隠蔽され黙殺されがちな事項に注意と関心を払う。あるいは、記述することの困難、迷いや立ちすくみにも関心を向ける。
<2>震災体験が、研究活動や、社会と生活のあり方にどのような変化をもたらすか、という大きな視座を常に念頭に置く。
<3>そのうえで、従来の枠組みや常識にとらわれない活動、ひいては研究と表現のあり方を模索する。

2.メンバー(2013年5月現在)

矢守克也(京都大学)
伊藤哲司(茨城大学)
田垣正晋(大阪府立大学)
鮫島輝美(京都光華女子大学)
八ッ塚一郎(熊本大学)

3.これまでの活動(2012年5月現在)

(1)研究合宿の開催

 茨城県東茨城郡大洗町を主たる会場に、当地で復興支援の取り組みにあたる伊藤委員のお世話により、震災WG主催の研究合宿を3度にわたって開催しました。

①第1回 2011/10/8-10/10
 大洗の町を歩き、また地元の方々のお話に耳を傾けて、被災状況や復興への取り組みを学びました。また最終日には北茨城市まで足を伸ばし、みなし仮設住宅で過ごされる方々とも交流しました。教育、臨床、看護、社会、文化など、多様な専門領域をもつ、北海道から九州までの会員13名が参加しました。

②第2回 2012/3/5-3/7
 大洗町役場の後援も得て、矢守委員の防災ゲーム「クロスロード」などを交えつつ、町民の方々とワークショップを行いました。さらに、北茨城市まで足を伸ばし、津波で流出した六角堂の再建事業(茨城大学五浦美術文化研究所)、被災歴史史料の救出活動などを見学、学習しました。留学生も含め14名の参加がありました。

③第3回 2013/3/9-3/11
 茨城大学水戸キャンパスで行われた「第2回 あつまる、まじわる、つながる—地域のサステナ活動をつなぐポスター発表ワークショップ」(茨城大学地球変動適応科学研究機関(ICAS)主催)に、震災WGも共催として参加しました。災害研究から地域づくりまで、多彩なセッションの一員となりました。さらに、大洗町の地域づくりと交流の拠点「ほげほげカフェ」で行われたインタビューやワークショップにも加わりました。

(2)大会におけるシンポジウムの開催

①2011年度
 第8回大会(2011/11/26-27、広島・安田女子大学)にて、関連委員会との共催により、2つのシンポジウムを挙行しました。

  • 「語りにおけるポジショナリティと傷つきを語る/聴くための時間─質的心理学における『語り』研究の地平(2)─」(研究交流委員会と共催)
  • 「質的心理学の東日本大震災:『質心フォーラム』緊急特集連動シンポジウム」(『質的心理学フォーラム』編集委員会と共催)

 前者のシンポジウムでは、外傷体験と傷つきの語りをテーマに、広島という土地、被爆という体験を背景としたディスカッションが展開されました。東日本大震災をどうとらえ、被災体験にどのように寄り添うかという問題を検討する貴重な場となりました。

 後者のシンポジウムでは、『フォーラム』に支援活動の記録を寄せた執筆者が一同に会し、さらに独自のアプローチで支援にあたる人々も交えて対話しました。研究と実践の課題をめぐる討議には、フロアからも積極的な参加がありました。

②2012年度
 第9回大会(2012/9/1-9/2、横浜・東京都市大学)にて、『質心フォーラム』編集委員会との共催で下記のシンポジウムを行いました。

  • 「『被災地』からみた風評被害〜茨城・大洗町の取り組みを軸に」

 大洗町で観光と地域づくりに取り組む方々から、被災時の状況と復興への取り組み、地元からみたメディア報道の実情を語っていただきました。そのうえで、地域メディアや全国放送で活動する皆さんから、メディアの課題と新しい取り組みについて報告いただき、フロアも交えて討議を行いました。

(3)『質的心理学研究』

 『質的心理学研究』第11号(2012年3月刊行)に、緊急書評特集「震災とどう向き合うか 質的視点からの文献案内」を掲載しました。震災WGのメンバーも執筆に参加しています。

(4)『質的心理学フォーラム』

 『質的心理学フォーラム』第3号(2012年3月刊行)に、緊急特集「質的心理学の東日本大震災」を掲載しました。原稿の一部は質的心理学会のメールマガジンで先行連載しました。

 『質的心理学フォーラム』第4号(2013年4月刊行)では、上記緊急特集をシリーズと改めて連載を継続しました。メールマガジンでの先行連載をベースとした研究者からの支援報告、震災WG主催の研究合宿に関する記録などを掲載しています。

4.今後の活動予定

(1)『質的心理学フォーラム』

 『質的心理学フォーラム』第5号で、シリーズ「質的心理学の東日本大震災」第3回を掲載する予定です。

(2)その他、情報交換と広報全般

 以上に述べてきた活動を含めて、支援活動と研究活動についての情報を集約・交換するとともに、雑誌媒体、電子媒体、学会大会など、多角的に広報伝達を行っていきます。

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